備忘メモ(『注意と運動学習』から)

Gabriele Wulf氏の著書、「注意と運動学習」の序文から。

どれだけ上手に運動を遂行して学習できるかは、大部分が何に注意を向けるかに依存している。
注意を運動の結果に向けることは、身体の協調に向けるのに比べ、概してより良好な結果をもたらす。
運動の結果への注意は、パフォーマンスにほぼ即時的に影響することが多いが、より重要なことは、運動スキルの練習中に使用する注意の向け方は、学習過程全体に影響を与えることである。
すなわち、エクスターナル・フォーカスを使用した場合、インターナル・フォーカスよりも高いレベルの能力を早く習得できるだけでなく、それによって得たスキルはより “長期間” 保持される。つまり、一定の保持期間後にも、注意の向け方への指示がない場合や、ときには練習と同じような注意の向け方が使用できない場合でさえ、良好なパフォーマンスが見られる。

注意と運動学習―動きを変える意識の使い方

どのようなものがエクスターナル・フォーカス、或いはインターナル・フォーカスかは、以下の表の例を見るとだいたいのところはイメージできるかと。

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対象物が無い場合は、メタファーや運動の結果生じる幾何学的な図形や空間、想像上の目標物などが用いられている。

 

昔、あるボディワーカーの先生が、バレエを習いに行くのだけれどフィーリングワードが気になってしまって集中できず続かないとぼやいていらしたのを思い出したりもしたが、ダンスでは、メタファーやフィーリングワードが用いられることも少なくなく、身体感覚に寄ったフィーリング・ワードには確かに、時に如何なものかと感じるような表現や、時に誤解を生むような曖昧な表現もある。

だが、身体や運動そのものではない、運動の結果を表すというガイドラインを参考にすれば、より効果的で混乱の無い表現を創造していくことや、その適切なタイミングや適切な量の情報の与え方を見出していくことができるのではないだろうか。

そして学ぶ側もまた、それらを受け止めてからの「想像力」や場合によっては自分の言葉に置き換えていく「創造力」も求められるのではないかと思う。

 

伝統的なアプローチでは、自分の身体力学に注意を向ける。これはWulf教授が‘インターナルフォーカス’と呼んでいるものだ。人々は、‘マッスルメモリー’ や自分の体に正しいことを ‘させる’ ことについて語っている。一方、Wulf教授は彼女の多数の研究によって、もっとよい方法があることを示してくれた。それは自分の動作のゴールを考えることで、彼女が ’エクスターナルフォーカス’ と呼んでいるものだ。脳は、どのように効率的かつ無意識にゴールを達成するかは知っているが、意識的に計画を実行することはとても下手だ、と彼女は考えたのだ。


カリフォルニア大学バークレー校心理学教授Bill Prinzmetal氏が、自身の体験談として、雑誌Windsurfingに送った手紙から

 

また、この本の最後に以下のようなことも述べられている。

 

非常に幼い子どもは運動スキルを行う際に指示に従うだけの注意の範囲や容量を持っていないと思われる。また、かれらは自分の運動の結果に注意を向ける傾向があり、エクスターナルフォーカスの指示が本質的に冗長となる可能性がある。注意の向け方の指示を有効に使用することができる年齢を特定できるような研究が必要である。 

 つまり、エクスターナルフォーカスは幼いころの注意の向き方であると言える面もあるわけだ。

少なくともナチュラリゼーションに於いては、その「邪魔をしない」に尽きると、ここからも感じた次第だ。