薔薇色の脚

大掃除の際の蔵書整理で面白い本が出てきた。

山尾悠子 著『夢の棲む街』という小説。

澁澤龍彦的な世界観がお好きなダンス愛好者の方であれば(と書きつつ友人の顔が浮かんだり^^;)、多分面白いと思う。

例えば、こんな一節。

劇場の踊り子たちは<薔薇色の脚>と呼ばれている。それは全く見事な脚で、太めの腰から伸びている適度に肉のついた腿とふくらはぎ、よく締まった足首、そしてやや華奢な踵から爪先まですっかり薔薇色の絹のタイツで覆われているところからこの名がつけられている。その下半身とは対照的に上半身は全く無視され、筋肉は栄養失調と運動不足で萎えたように縮み、さらに骨格までもがひとまわり大きさが縮んでいるため、飢餓状態の子供の躰ほどの大きさに干からびていた。

山尾悠子 著『夢の棲む街』

 

 

コトバがひとつ吹き込まれるたびに、私たちの脚は重くなる。私たちとて踊り子の端くれ、コトバのない世界の縁を、爪先立って踊ってみたい気があったのだ、と。

山尾悠子 著『夢の棲む街』

 


現在、ハヤカワ文庫版等の古書は高値になっているが、ちくま文庫から出版されているこちら↓にも収録されているのではないかと。

増補 夢の遠近法: 初期作品選 (ちくま文庫)

文学の中の身体や動きの表現には、時々ハッとさせられる言葉があるが、山尾悠子氏のそれは現実的にはあり得ないようなデフォルメされた身体のようでいて、何か本質的なものをそこから浮き出させているように思える。